本田先生の講演では、HAEの医学的基礎知識から、患者さんが病気と主体的に向き合い、自分らしい人生を歩むための具体的な心構えまでが、丁寧に解説されました。
HAEは、血液中のC1インヒビターというタンパク質の不足や機能低下が遺伝的な原因で起こる希少疾患です。このタンパク質は、血管から水分を漏れ出させる作用を持つ「ブラジキニン」という物質の過剰な産生を抑える役割を担っています。そのため、HAE患者さんの体内ではブラジキニンがコントロールされず、予測不能な腫れ(浮腫)が体の様々な場所に繰り返し現れます。
主な症状は、顔(特に唇やまぶた)、手足といった皮膚の腫れ、そして激しい腹痛や嘔吐を伴う消化管の粘膜の腫れです。中でも最も注意すべきは喉(喉頭)の腫れであり、気道を塞いで窒息を引き起こす危険があるため、命に関わる緊急事態として迅速な対応が不可欠となります。
かつては専門医が少なく、症状が他の病気と似ているため、診断がつくまでに平均15年以上を要することも稀ではありませんでした。しかし近年は疾患の認知度が向上し、ご家族に患者さんがいる場合、たとえ症状が出ていなくても血液検査(ファミリーテスト)によって早期に診断することが可能です。これにより、万が一の発作に備えることができ、命を守ることに繋がります。
現代のHAE治療は、以下の3つのアプローチを患者さんの状況に応じて組み合わせることで、発作を包括的に管理します。
実際に発作が起きてしまった際に、その症状を可能な限り速やかに、そして重症化する前に抑えるための治療です。
歯科治療(抜歯など)や外科手術、内視鏡検査といった、体に負担がかかり発作のきっかけ(誘因)となりうることが分かっている医療行為の前に、あらかじめ発作を起こさせないために行う治療です。
定期的に薬を使用することで、発作そのものが起きない状態を維持し、日常生活から発作の不安を取り除くことを目指す治療です。
これらの治療法を戦略的に組み合わせることで、HAEは十分にコントロール可能な時代になっています。
現代のHAE治療が目指すのは、単に発作回数を減らすことだけではありません。最終的な目標は、患者さんが病気を理由に学業、キャリア、旅行、趣味といった人生の可能性を諦めることなく、健常者と変わらない生活(発作ゼロの状態)を送れるようにする「生活の健常化」です。
診察時には、発作の状況(頻度、部位、重症度)に加えて、「その発作によって具体的に生活にどのような影響があったか(仕事を休んだ、楽しみにしていた行事を欠席したなど)」「何ができなくて困ったか」「将来に対して何が不安か」を具体的に伝えることが重要です。
多くの患者さんは、症状に慣れてしまったり、多忙な医師に遠慮したりして、「言っても仕方ない」という思いから、自身の苦痛や生活への影響を無意識に過小評価して伝えがちです。しかし、そのありのままを伝える一言が、医師がより適切な治療方針を共に考えるための重要な情報源となります。
適切な治療を受け、医師と密に連携することで、これまで「HAEだから」と我慢していた活動や希望を叶えることは十分に可能です。自分らしい人生を『無理せず、諦めないでほしい』という力強いメッセージが強調されました。
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