HAEを話し合う 松繁先生講演

社会学者の視点から患者さんの見えない苦悩と周囲との対話の重要性を解説

社会学者の視点から、HAE患者さんが抱える目に見えない苦悩を解き明かし、一人で抱え込まずに周囲と「話し合う」ことの重要性と、そのための具体的なヒントが示されました。

医療者と患者の視点の「ズレ」

医療者は「治療効果や検査数値の改善」という医学的観点を中心に物事を捉えがちですが、一方で患者は「家族、仕事、趣味といった日々の生活」を基盤に自身の状態を考えます。例えば、発作回数が減っても「いつ発作が起きるか」という不安が常に付きまとうなら、患者にとっての生活の質は十分に改善されたとは言えません。この視点の「ズレ」を認識し、対話を通じて両者の視点を融合させることが、真に質の高い医療の実現に繋がります。

医療従事者は、患者が病院の外で人知れず行っている「日常生活の困難(家事や育児など)」や、病によって変化を余儀なくされた「人生設計の再構築」といった目に見えない苦労を全て把握することは困難です。だからこそ、患者側からその状況を伝えることが重要になります。


「話し合う」ための具体的なヒント

「語り」の力

不安や悩みは、頭の中で漠然と考えているだけでは整理されません。それを言葉にして「話す」、あるいはノートに「書き出す」という行為を通じて、初めて自分の本当の気持ちや求めていることが明確になり、精神的な負担も軽くなります。

4つの視点で整理する

診察という限られた時間で的確に伝えるため、事前に以下の点を書き出して準備することが推奨されました。これは、対話をより建設的にするための道しるべとなります。

1わからないこと

説明を聞いて理解したつもりでも、後から疑問が湧くことは多々あります。自分の言葉で復唱してみるなど、本当に理解できたか問い直すことが大切です。

2不安なこと

「遺伝のこと」「将来の仕事のこと」など、漠然とした不安を具体的な言葉にすることで、対処法を考える第一歩になります。

3知っておきたいこと

治療そのものだけでなく、治療が自分の生活にどう影響するのか、長期的な視点での情報を求めることも重要です。

4したくないこと

自分の生活信条や価値観に照らし、治療のためであっても「これだけは譲れない・したくない」という点を明確にすることは、自分自身を大切にすることに繋がります。

堂々と迷い、間違えていい

病気という大きなストレス下で、常に冷静かつ正確な判断を下すのは困難です。周囲の人々、特に医療者は、患者が安心して迷い、時には誤解してもそれを修正しながら共に歩んでいけるような、心理的に安全なケア(伴走的な支援)を提供することの重要性が述べられました。

松繁卓哉(まつしげ たくや)先生
追手門学院大学 社会学部 教授
追手門学院大学で教鞭をとる、医療社会学の専門家。長年にわたり、難病と共に生きる人々の支援現場を研究されてきました。病気のつらさは、体の症状だけではありません。先生は、患者さんが抱える「見えない不安」や「生活の中の困りごと」に社会学の視点から光を当て、その気持ちを整理し、医師や周囲の人に上手に伝えるための具体的なヒントを教えてくれます。「堂々と迷っていい」という温かいメッセージは、多くの人の心を軽くしてくれるでしょう。
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JPN-OTH-0400

共に生きるより良い生活