監修:地方独立行政法人福岡市立病院機構 福岡市民病院 堀内孝彦先生
遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema: HAE)は、親から子へと遺伝する病気です。ここでは、HAEがどのくらいの確率で遺伝するのか、また、遺伝する病気を持つことの不安や悩みはどう解決すればよいかなどについて、ご紹介します。
HAEが遺伝するしくみ
HAEは、主にC1インヒビター(別名:C1インアクチベーター)という物質の遺伝子の変化によって起こる病気です。HAEが親から子どもへ遺伝する確率は、親のどちらかがHAEの場合に50%となります1)。人には、2つの対になった遺伝子があり、子どもは父親と母親の遺伝子を1つずつ受け取ります。変化のある遺伝子を子どもが受け取った場合、HAEが遺伝します。
親のどちらかがHAEの場合
ただ、血縁者に同様の症状をもつ方がいらっしゃらず、何らかの原因によってC1インヒビター遺伝子の変化が起こり、発症する場合があります。それを「弧発例」と呼んでいます。
HAEの弧発例の場合
C1インヒビターの遺伝子に変化があるかどうかは、遺伝子検査で確認することができます。検査で遺伝子の変化を確認しておくと、まだ症状が出ていない患者さんも将来の発作に備えることができます。遺伝子検査については、かかりつけ医にご相談ください。
遺伝カウンセリング2)
HAEの遺伝に対する不安や悩みについて相談できるのが遺伝カウンセリングです。
遺伝カウンセリングでできること
遺伝カウンセリングの専門家である臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラー®が、じっくり話を聞き、科学的根拠に基づく正確な情報をわかりやすく伝えてくれたうえで、不安や悩みの解決をサポートしてくれます。ご本人やご家族のほか、遺伝に関する相談をしたい方は誰でも受けることができます。
遺伝カウンセリングを受けられる場所
まずは主治医に相談しましょう。もし、かかりつけの病院での遺伝カウンセリングが難しい場合は、以下のホームページで相談できる施設を調べることができます。
⇒遺伝子医療実施施設検索システム http://www.idenshiiryoubumon.org/search/
遺伝カウンセリングの費用3)
遺伝カウンセリングの費用は、ほとんどの場合自由診療となり、健康保険が適用されません。病院によって費用は異なりますが、5,000~10,000円程度の施設が多いようです。
ただし、健康保険が適用される遺伝学的検査を受けた後、その結果について説明を受ける際の遺伝カウンセリングでは、健康保険が適用されることがあります(令和4年4月現在)4)。HAEの診断で遺伝学的検査が必要になった場合、健康保険が適用されるため自己負担額は3割負担なら3,000円になります5)。しかし健康保険が適用される遺伝学的検査は、厚生労働省が定める基準を満たす病院でかつ事前に届け出ている必要があるため、すべての病院で健康保険が適用されるとは限りません。詳しくは遺伝カウンセリングを受けたいと考えている病院に、事前にお問い合わせください。
1)大澤勲 編:難病 遺伝性血管性浮腫(HAE). 医薬ジャーナル社. 2016.
2)日本遺伝カウンセリング学会 遺伝カウンセリングQ&A(http://www.jsgc.jp/faq.html)
3)日本認定遺伝カウンセラー協会 一般向け 遺伝カウンセリングの費用(http://plaza.umin.ac.jp/~cgc/public/cost.html)
4)医科診療報酬点数表 第3部 検査 第1節 検体検査料 第1款 検体検査実施料 (血液学的検査) D006-4 遺伝学的検査
5)医科診療報酬点数表 D006-4 遺伝学的検査(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000907834.pdf)